(業界ニュース)夏休みで「皆勤手当が消失」23歳新卒女性のガッカリ
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8/10(土) 9:30配信 YAHOO!ニュースより
働き方改革の一環で、夏季休暇の一部が有給休暇の強制消化日となった会社に新卒入社した23歳女性は、消化日の2日分が欠勤扱いになると聞き、ガッカリしていまいました。特定社会保険労務士の井寄奈美さんが解説します。【毎日新聞経済プレミア】
◇夏休みで皆勤手当消失 新卒ガッカリ
A子さん(23)は、4月に社員数約50人の製造会社に入社した大卒新人です。会社の給与には、基本給以外に皆勤手当があります。A子さんは皆勤手当を得るため平日は早めに就寝するなど体調管理に気を配り、入社から無遅刻、無欠勤でした。しかし、8月の夏季休暇のうち2日分が欠勤扱いになると聞き、ガッカリしています。
会社は、社員が無遅刻、無欠勤の月に皆勤手当を支給します。A子さんの給与は、基本給19万5000円と皆勤手当1万5000円で月21万円です。残業はほとんどありません。
◇夏季休暇の一部が有休の強制消化日に
昨年、就職活動をしていたA子さんは会社説明会で、休日は土日と祝日で、その他に、8月と年末年始にそれぞれ3~5日の休暇があると聞いていました。ところが入社してみると、今年から休暇制度が変わり、夏季休暇と年末年始休暇のそれぞれ2日は年次有給休暇の強制消化日となっていました。
有休の強制消化日は会社全体が休業するため、出勤できません。新入社員のA子さんは、入社から半年が経過する10月にならないと有休が付与されないため、欠勤として扱われると言われました。また、有休を使い切っている2年目以降の社員も欠勤となるそうです。強制消化日の2日は欠勤となるため、8月の皆勤手当は支給されず、さらにその2日に相当する分が基本給から引かれ、給与が大幅に減ります。
A子さんは「給与を引かれるぐらいなら出勤したい」と上司に伝えましたが、「会社が休みなので、それはできない」と言われました。納得できず、落胆しています。
◇一斉休業を導入する際の注意点
まず、有休の強制消化について考えます。働く人には、有休をいつ取得するかを決められる「時季指定権」があります。しかし、働く人の自発的な意思に任せていては有休消化率が上がらないという現実的な事情があります。そこで働き方改革の一環として、2019年4月施行の改正労働基準法で、会社は4月1日以降に10日以上の有休を与えられる社員に取得時季を指定し、付与日から1年以内に5日以上の有休を取らせなければならなくなりました。
事例のA子さんの会社が夏季休暇の一部を有休の強制消化日にしたのは、こうした背景があるのでしょう。ただし、会社が新たに一斉休業制度を導入する場合は、有休のない社員への配慮が求められます。本来、有休を使える日は「労働日」で出勤できるはずですが、一斉休業となれば有休のない社員は休まざるを得ない状況になるからです。
そのため、有休のない社員に対しては、一斉休業で消化する有休を前倒しで付与する▽特別休暇扱いとする▽会社都合の休業扱いとし、労基法が定める休業手当を支払う──のいずれかの対応が求められます。また皆勤手当は、支給する条件を会社独自で決められますが、今回のようなケースで不支給とするのは不適切と考えられます。
◇有休のない社員への配慮を
その次の年以降も一斉休業制度を続ける場合は、あらかじめ会社と従業員代表もしくは従業員の過半数で組織する労働組合で労使協定を締結し、強制消化日を有休の計画付与の扱いとして、その分の日数を次に付与する有休から差し引くといった対応ができます。計画付与は、社員の持つ有休のうち5日を超える日数について会社が取得時季を指定することです。そうすれば一斉休業にあてる有休が残っていないという状況が起こりません。
A子さんのように、新入社員で一斉休業時に有休が付与されていないケースでは、有給の特別休暇を与えるか、入社から6カ月たった時点で付与する10日の有休の一部を分割し、先に付与する方法があります。例えば、8月の強制消化日である2日分を先に付与し、10月に残りの8日を付与できます。労基法が定める有休の付与基準は入社後6カ月ですが、入社時から有休を付与する会社も多くあります。そうすれば、2年目以降の社員と同様に計画付与をすることができます。
事例のA子さんの会社は、有休の強制消化日を導入したものの、一部の社員への配慮を欠くなど事前の準備ができていないようです。休暇は、社員がリフレッシュするためのものです。会社は、社員が気持ちよく休める制度を整え、その制度を変更する場合には不利益を被る社員への対応を考えることが大切です。労働条件を変更する場合は労働契約法の規定に従い、原則労使の合意が必要です。